反政府勢力の資金源を断つために動いた国連安保理とNGO
アンゴラの和平プロセスを進めていた国連安保理は、和平交渉に非協力だとしてUNITAに何度か警告を発していました。この流れの中で、資金源となっている紛争ダイヤモンドも問題視されるようになってきました。
1998年、国連安保理はUNITAへの制裁を決議します。海外資産凍結などとともにダイヤモンドに関する条項も盛り込まれました。国連は、全加盟国に対して、アンゴラ政府が発行する原産地証明を持たないアンゴラ産ダイヤモンドの禁輸を求めたのでした。
とはいえUNITAは第三国を通じて、ダイヤモンドをヨーロッパに輸出していましたので、この決議にどれほどの実効性があるのか疑問とする向きもありました。
その状況を変えたのが、イギリスのNGO「グローバル・ウィットネス」のキャンペーンです。このNGOが98年12月に出した報告書では、UNITAにとってダイヤモンドが重要な資金源になっていること、そして各国のずさんな貿易管理と企業の無責任な行動がこの「紛争ダイヤモンド」の取引を可能にしていると厳しく批判したのです。さらにその中では、世界のダイヤモンド市場に強い影響力を持つデビアス社や、アンゴラ産のダイヤモンドを輸入しているベルギー政府を名指しして、改善を求めていました。
これはダイヤモンドの世界に大きなインパクトを与えました。美しく輝く宝石が、実は「血塗られたダイヤモンド」ということになれば、これまで営々と築き上げてきたイメージが崩壊してしまいます。それだけは絶対に避けなければならないことでした。
99年10月、デビアスはアンゴラ産ダイヤモンドの買い付けを中止すると発表します。
さらに2000年3月には、国連安保理のアンゴラ制裁委員会の要請で設置された専門家委員会が、報告書を提出します。そこには、武器や軍事物資、石油や石油製品、ダイヤモンドや金融資産などについて、UNITAへの制裁について、制裁破りが行われている実態が記されていたのです。ここでもベルギー政府は批判されてしまいます。こうした国連やNGOからの働きかけで、アンゴラ産の紛争ダイヤモンドは市場から締め出され、UNITAは資金源を断たれていきました。
アンゴラの内戦は、2002年4月にようやく終結を迎えます。その後のアンゴラは、正常化したダイヤモンドや原油の輸出によって、経済成長を遂げています。
国連やデビアス社がダイヤモンド輸出を禁じたことで、やっと内戦を止めることができたのです。しかし、27年にわたる内戦で360万人もの死者が出たと言われています。アンゴラに紛争ダイヤモンドがなければ、そしてそれを利用して商売を使用という国や企業が無ければ、内戦はこれほど長期化せず、結果的に命を落とす人も少なくて済んだ可能性はあります。
ダイヤモンド産出国という立場が、不幸な結果を招いてしまったと言えるのかもしれません。