(写真:アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 1年以上前のことだが、とある大手証券会社からSDGs(持続可能な開発目標)関連銘柄(SDGsに取り組む企業の株式)を中心に運用した投資信託を強く勧められたことがある。だが、その運用先を見てみると、「好未来教育集団(TAL)」など中国の新興オンライン教育企業が複数含まれており、私はつい、TALのどこがSDGsなのか? と担当者を問い詰めた。

 目下の中国習近平体制は、「改毛超鄧」(毛沢東路線を焼き直して鄧小平路線を超える)という時代に逆行した路線をひた走っている。経済では民間企業に厳しい計画経済への先祖帰りを求め、西側の普遍的価値観を否定し、中国の社会主義核心価値を押し付け、文革時代のように徹底した共産党の指導による管理監視社会の実現を目指している。そんな中国の企業に、そもそもSDGsの概念が当てはまるのか。

 さら教育界では12K(幼稚園から高校までの教育)および大学に、イデオロギー教育の徹底が指示されており、「七不講」(注)が2013年に各大学に通達されて以来、人文系学問の自由が大幅に制限された。これに背く教授や講師、教師が学生、生徒に密告されて職を失う事例も1つや2つではない。

(注)「七不講」は次の「七つの口にしてはならないテーマ」のこと。(1)普遍的価値、(2)報道の自由、(3)市民社会、(4)市民の権利、(5)党の歴史的錯誤、(6)特権貴族的資産階級、(7)司法の独立。

 小学校では国家安全教育日(4月15日)に、スパイの密告を奨励され、大学生は「ネット文明ボランティア」というネット紅衛兵のような役割を自ら志願して海外のSNSで国内外プロパガンダに勤しんでいる。そんな中国の教育界で、どうして民営のオンライン教育企業が「持続的発展が可能」と思えるのか。

 確かに2020年の1年をみれば新型コロナ流行の影響でオンライン教育市場が一気に拡大し、中国人の教育熱の高さや一人っ子政策の緩和などの傾向を見れば教育・学習支援サービス企業はいかにも将来性がありそうに見える。だが、そもそも中国は学問・思想の自由の制限を強化しており、中国共産党がこの分野を民営資本や外資の好きなようにさせたままでいるわけがないのではないか?・・・というような理屈でケチをつけたのだった。