(英エコノミスト誌 2021年7月17日号)

中国の脅威で同盟国を焚きつけても米国が保護主義に走れば誰もついて来ない

米国の保護主義と、「味方になるか敵になるか」の判断を他国に迫る姿勢は、米国自身を傷つけ、同盟国を遠ざける。

 中国を世界経済に迎え入れれば、あの国を「責任あるステークホルダー(利害関係者)」にできるし、政治改革をもたらすことにもなるだろう。楽観論者たちは長年、そう期待していた。

 ドナルド・トランプ氏は米国大統領として、これを弱腰だと切り捨てた。

 そしてジョー・バイデン大統領は今、トランプ流のこけおどしを米中対立のドクトリンに変換しつつある。

 これはライバル関係にある政治システム同士の戦いであり、勝つか負けるかのどちらかだというのだ。

 トランプ氏とバイデン氏が2人がかりで、リチャード・ニクソンの訪中以来、ここ50年間で最も劇的な米国外交政策の大転換を成し遂げたことになる。

現実を前に崩れた楽観論

 バイデン氏とその側近たちがこのドクトリンの基礎に据えているのは、中国は「共存することよりも、自分が支配することへの関心の方が強い」との認識だ。

 米国の政策は、中国の野心を鈍らせることを目指したものになっている。

米国は今後、気候変動問題など共通の利益がある分野では中国と協力するものの、それ以外の分野では中国側の野心に対抗する。

 このことは、米国が国内で体力を増強する一方、国外では経済的、技術的、外交的、軍事的、そして精神的な影響力を補ってくれる同盟国と協力していくことを意味する。

 バイデン氏が掲げる新しいチャイナ・ドクトリンは、その大半が理にかなっている。前述の楽観論者の主張は、中国の力という現実の前にもろくも崩れた。

 習近平国家主席が率いる中国は、南シナ海に要塞を築き、香港に共産党の支配を押しつけ、台湾を脅迫し、インドと小競り合いをしたうえに、国際機関における西側の価値観を打ち砕こうと試みている。

 多くの国が中国の「戦狼外交」に警戒感を抱いている。