(英エコノミスト誌 2021年7月10日号)

目ぼしい成果が何もないまま20年に及んだ米軍のアフガニスタン駐留が終わった

アフガニスタン人が被るこの戦いの影響はすでに壊滅的だが、今後さらに悪化する公算が大きい。

「おい、私は楽しい話がしたいんだ!」

 ジョー・バイデン米大統領は7月初め、アフガニスタン駐留米軍の完全撤収が数週間後に近づいていることについて記者に問われた時、こう言った。

 大統領が話題を変えたがったのも無理はない。米国はアフガニスタンで20年も戦ってきた。つぎ込んだ戦費は2兆ドルを超えた。

 数千人の自国兵士を失い、数万人に及ぶアフガニスタンの兵士や文民の死を目の当たりにした。

 そして今、見るべき成果がほとんどないまま、この惨めな冒険を完全に終わらせようとしているのだ。

 確かに、アフガニスタンから2001年9月11日の同時多発テロを計画して戦争の引き金を引いた国際テロ組織のアルカイダは、完全に排除されたわけではないものの、もう大きな勢力ではない。

 だが、成果らしきものは、せいぜいそこまでだ。

 過激派組織イスラム国(IS)の支部など、ほかの反米テロ組織はアフガニスタンで活動を続けている。

 ウサマ・ビンラディンをかくまい、9.11後に米軍の支援を得た勢力に追い出された反政府武装勢力タリバンの熱心なメンバーは、恐ろしい復活を遂げた。

 タリバンはアフガニスタンの約半分を完全に支配しており、残りの半分の征服にも乗り出す恐れがある。

 米国があれほどの兵士の血と資金を投じて育てた民主的で親西側の政府は腐敗し、あちこちで罵られ、じりじりと後退している。