(英エコノミスト誌 2021年7月10日号)

世界経済が急速な立ち直りを見せている。だが、パンデミックからの回復は一様ではなく、脆い。
新型コロナウイルスのパンデミックは経済を深刻な不振に陥れたが、足元では前代未聞の奇妙な好景気が進行中だ。
原油が高騰する一方、レストランや運送会社は従業員を確保するために競い合ったりへつらったりせざるを得なくなっている。
今年は過去最高益を更新しそうだという見通しを複数の上場企業が明らかにしていることから、株式市場は大騒ぎになっている。
米銀JPモルガン・チェースと英調査会社IHSマークイットが算出する指数によれば、世界経済の現在の成長率は、2006年の熱狂的な時期以来の高水準になっている。
新型コロナウイルス感染症から逃れられるとなれば、どんなことでもお祝いをする根拠になる。
だが、今日の好景気には不安感もつきまとう。なぜなら、地面の下には3本の断層が走っているからだ。
これから誰が成功するのか、今の時代を生きる人々の記憶のなかで最も異例な景気回復を維持できるのか――。どちらの答えも、この3本の断層次第になる。
ワクチン接種の有無と需給ギャップ
1本目の断層は、ワクチン接種が済んだ人と済んでいない人とを分け隔てる線だ。
新型コロナを落ち着かせることができるのは、国民へのワクチン接種が進んでいる国だけだ。
ワクチン接種の進展こそが小売店やバー、オフィスなどでの業務を恒常的に再開できる条件であり、顧客と働き手が安心して外出できる条件でもある。
しかし、1回目の接種を済ませた人は全世界で4人に1人の割合でしかなく、2回目も済ませた人は8人に1人にとどまる。
米国でさえ、ワクチン接種率の低い州は、感染力の強い「デルタ株」というインド型の変異ウイルスに弱い。