平壌中心部の街並み。ここだけ見ていると、物資不足に陥っている国には見えない(写真:AP/アフロ)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

 過去5回の記事では、外貨に依存した北朝鮮経済の現状や銀行預金が発達していない北朝鮮における現金管理のドタバタ、北朝鮮の富裕層で広まっている財テク、北朝鮮における不動産取引、マイカー事情について紹介した。今回の「北朝鮮生活百科」は、平壌の不動産業界で“ゴッドファーザー”と呼ばれる男の恐るべきやり方について。

日本や韓国からの送金で成り立つ北朝鮮・外貨循環経済の地下迷宮(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65851)
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“売買”可能な物件とできない物件に分かれる北朝鮮の不動産事情(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65909)
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 下落傾向が続いていた平壌のマンション価格が再び上昇している。北朝鮮で最も高額な平壌の高級マンションは平均10万ドルを上回り、大同江(テドンガン)が見下ろせる「眺望圏マンション」は20万ドルで取引されている。

 第4話「“売買”可能な物件とできない物件に分かれる北朝鮮の不動産事情」で書いた通り、北朝鮮には4種類の不動産がある。眺望圏マンションは国策事業の一環で建設されたマンションではなく、政府機関や企業の職員向けに、外貨を稼ぐ目的で建てられた利用権の移転が可能なマンションだ。

 平壌にマンションを自由に建てることはできず、国が指定した平壌市都市建設計画に沿ってのみ建設できる。平壌市都市設計事業所では、既に50年後の平壌市未来都市設計計画が作成されている。

 地方の都市設計事業所でも、各地域の未来都市設計計画が作成されており、道路や公園が造成される緑化地域予定地にマンションを建てることはできない。

 ただ、緑化予定地域の多くは眺望に恵まれており、マンション建設のニーズがある。緑化予定地域にマンションを建設する場合、建設可能な敷地に用途を変更しなければならない。

 用途変更のことを、北朝鮮では「敷地明示」を得るという。