過去3回の記事では、外貨に依存した北朝鮮経済の現状や銀行預金が発達していない北朝鮮における現金管理のドタバタ、北朝鮮の富裕層で広まっている財テクについて紹介した。今回の「北朝鮮生活百科」では、北朝鮮における不動産の種類とその取引について明らかにしていく。
◎日本や韓国からの送金で成り立つ北朝鮮・外貨循環経済の地下迷宮(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65851)
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貨幣の価値はインフレなどによって大きく変わる。かつて韓国のバス運賃は100ウォンあまりだったが、今では10倍以上に上がっている。そのため、人々は資産運用として不動産に目を向けるが、それは北朝鮮の人々も同じだ。
土地やマンションなどの私的所有を認めていない北朝鮮では、不動産は生活の場を意味している。土地は国家所有であり取引の対象ではない。住宅は1世帯1住宅のみで、一人が複数の住宅を持つことも認められていない。当然、不動産賃貸業は存在しないが、住宅やマンションの価格が上昇するという矛盾も起きる。
北朝鮮における不動産の基本である住宅やマンションは、大きく4つに分けられる。
まずは、政府や党、国家機関の高官に割り当てられる期間制マンションだ。
韓国や日本の「官舍」に相当する期間制の住宅やマンションは、当該機関に勤務している間だけ居住できる。解任されるか引退すると、直ちに明け渡して退去しなければならない。官舎の入居環境や生活環境は北朝鮮では最上級だが、取引できない。
二つ目は、北朝鮮政府の功労者に贈られるマンションだ。
世界選手権大会や国際オリンピックで優勝したスポーツ関係者、有名芸能人、科学者らに贈られる。このタイプの住宅は過ちを犯さない限り子供たちに相続できるが、売ることはできない。功労者に贈られるマンションとしては、金正日時代には平壌の光復通りや統一通り、金正恩時代は黎明通りや倉田通り、科学者通りに建てられたものが有名だ。
三つ目は、一般住民に割り当てられる住宅やマンションだ。