(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
6月29日、韓国政界が大きく揺れた。
この日の午後、前検事総長の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が、ソウル瑞草区(ソチョグ)の『梅軒(メホン)尹奉吉(ユン・ボンギル)義士記念館』で記者会見を行い、政権交代に関する意志を4100字あまりの政治宣言文に込め、来年3月の大統領選挙に向けた出馬宣言を行ったのだ。
「政権交代できなければ韓国は腐敗が横行する社会に」
尹錫悦氏は「政権交代を成し遂げることができなければ(中略)それこそ『腐敗ワンパン』の大韓民国になるだろう」と強調した。「ワンパン」とは「完全に(ワンジョニ)幅を利かせる(パンチダ)」を略した言葉だ。要するに、政権交代が実現しないと韓国は腐敗が横行する社会になると警告したのだ。
そして、そのためには「十種類のうち九種類考えが違っても一つの考え、政権交代と国の正常化を考えるすべての人々が力を合わせなければならない」「考えの異なる人が共に力を合わせるとき、私たちはさらに強くなる」として政権交代への並々ならぬ決意を語り、広く協力を呼びかけた。
革新系が文在寅氏を中心に固く結束してきたのとは対照的に、これまで保守系の最大の弱点はその分裂であった。
そうした中、4月7日に行われたソウルと釜山の市長選挙では、腐敗と政策の失敗でイメージが地に落ちた文在寅大統領はほとんど前面に姿を現さなかった。そして最大の注目を集めたソウル市長選挙では、保守系の候補者調整が成功し、呉世勲(オ・セフン)氏に一本化されたことから、与党候補の朴映宣(パク・ヨンソン)氏を大差で破り勝利することができた。