改憲派の一人で知られている金鍾仁(キム・ジョンイン)国民の力前非常対策委員長も『東亜日報』とのインタビューで、「崔院長が自分の任期を放棄する改憲を検討中という話を間接的に聞いた」「国家に対する忠誠心はすごい方だ。彼の意志によって大統領選挙戦が大きく変わるだろう」と期待を示したことがある。

 Xファイルの出どころとしては、元公安検事の黄教安(ファン・ギョアン)元首相にも疑いの目が向けられている。検察内に後輩検事が健在であるという点や、次期大統領選で「国民の力」の候補者の座を狙っているという点があるためだ。黄氏は「Xファイル黒幕説」について、「話す価値もない」と強く否定しながらも、尹前総長に向かっては「堂々と原則通り、過ちがなければ国民の前に一つ一つ明らかにしてほしい」と忠告している。

一部は文政権シンパのユーチューバーが作成

 さて、肝心の「尹錫悦Xファイル」の中身だが、韓国メディアによると、汝矣島(ヨイド=韓国国会の所在地)で噂されている尹前総長や夫人、義母に対する疑惑が網羅されているという。現在、5種類の「尹錫悦Xファイル」が汝矣島で流通されているようだ。ファイルの中で、尹前総長に関しては、検察時代に知人や財閥に対する捜査で手抜きをしたという疑惑が、また2012年に結婚した夫人のキム・ゴンヒ氏や資産家の義母に関しては、株価操作疑惑や詐欺疑惑などが言及されていると言う。どうやら主には夫人の過去に対する未確認のゴシップらしい。

 こうした中、22日、市民団体が宋永吉「共に民主党」代表とXファイルの作成者を名誉毀損で検察に告発した。

 すると翌23日には、Xファイルの一部を作成したというユーチューバーが自ら名乗り出た。このユーチューバーは、「開かれた共感TV」という時事YouTubeチャンネルの代表で、政権寄りの記者らが出演して文政権が主張する「検察改革」を後押しするような番組を主要コンテンツとして制作している。彼らはXファイルの一部は「今後録画する放送の台本に使おうと作成した取材ノート」としている。それが流出したということらしい。この「開かれた共感TV」は、共に民主党の衛星政党「ヨルリン民主党(開かれた民主党)」とも密接な関係にあるという話も聞こえている。

 日本の権力闘争の中心地である永田町は「狐とタヌキが化かし合うところ」と表現されることもあるが、陰謀や謀略が横行する韓国の汝矣島も、それに劣らないジャングルだ。政治家としてはヒヨッコの尹錫悦前総長は、このジャングルで次期大統領選のレースを候補者として完走できるのだろうか。