名指しされた洪準杓議員は「Xファイルなど見たこともない」としながらも、尹前総長に向けて、「いつも査察をしていた方が不法査察を云々するのか」「(尹前総長に対する高い支持率は)真っ赤な蜃気楼に過ぎない」と攻撃した。第19代大統領選挙で自由韓国党(現・国民の力)公認候補だった洪議員は、昨年の総選挙で党の公認候補から漏れると離党して無所属で当選を勝ち取った。その洪議員は、国民の力に復党して来年の大統領選候補に出馬しようというプランを抱いており、世論調査を見ると、現時点で尹前総長以外の野党系候補の中で、第2位の支持率を持つ人物である。要するに、次期大統領選で、尹前総長は洪議員の強力なライバルになっているのである。

「Xファイルの作成者では」と名指しされた洪準杓議員(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 Xファイルが取りざたされる背景には、そうした野党側の激しいサヤ当てもあるようだ。

「尹錫悦」人気を快く思わない野党関係者も

 最初にXファイルの存在を世間に知らしめたチャン氏の背後にも「国民の力」内の政治元老らがいるという推測もなされている。チャン氏が長い間、補佐してきた金武星前議員は、代表的な改憲論者であり、帝王的大統領制がもたらす各種の弊害を防ぐために、大統領の権限を大統領と首相とが分ける「二元執政府制に改憲すべき」と主張してきた。これに対して、尹前総長は改憲に反対の立場を取っている。そのために金氏は、国民の力の改憲論者とともに、「改憲反対」の尹氏ではなく、第3の人物を公認候補に立てようとしているのではないかと考えられているのだ。

 実際、彼らは文在寅(ムン・ジェイン)政権の脱原発政策を監査したことで職権乱用の疑いで検察に告発された崔在亨(チェ・ジェヒョン)監査院長を国民の力の大統領候補に推し、二元内閣制を達成する計画を立てているという。