(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
来年3月の韓国大統領選挙で劣勢が伝えられている与党「共に民主党」が、最大のライバルになりふり構わぬネガティブキャンペーンを展開し始めた。
次期大統領選挙における野党「国民の力」の最大の課題は、共に民主党のネガティブキャンペーンからいかに身を守るかになりそうだ。
「共に民主党」は今回もネガキャン戦略捨てられず
保守系政党で最大野党の「国民の力」は、つい先日、36歳の李俊錫(イ・ジュンソク)氏が代表に就任し、古い党のイメージが一変した。一方、次期大統領候補の支持を問う世論調査では、前検事総長の尹錫悦(ユン・ソギョル)氏が首位を維持している。尹錫悦氏は既存の政治家でないことが支持の源泉になっていることから、政党にはいまだ属していない。しかし、独立した第3極として大統領選挙に出馬することになれば、野党系の支持票が割れることになりかねない。そのため、文在寅(ムン・ジェイン)現大統領を継ぐ革新系政権の継続を防ぐためには、尹氏と国民の力が手を組むことが条件になると見られている。
与党の「共に民主党」は政策の失敗と支持者偏重の政策のため、若者の将来への希望を奪ってきた。また、「自分がやればロマンス、他人がやれば不倫」という、いわゆる「ネロナンブル」という二重基準を恒常的に使い分け、政権の不正腐敗には見て見ぬふりをする一方、政治の責任については過去の保守政権に押し付けて、公正性の面で大きな疑問を国民に抱かせてきた。このため国民の支持をことごとく失い、現在、文在寅政権を支持しているのは「何があっても文在寅支持」という中核的な岩盤支持層だけの状態だ。ちなみに支持率は未だに30%台をなんとか維持しているが、韓国の世論調査への回答率は7%ほどであり、そもそも世論調査に回答する人は政権支持層に多いと言われている。となれば、実際の国民の支持は30%を大きく下回っているのだろう。