買い付け量で買い叩く手法も限界か

 現実に、関西の某水産会社の商品について、あるDSが値下げを要求し、あまりに低い金額を提示してきたため取引が続けられなくなったという事例をこの目で見た。同じDSの担当者にサーモンを買い叩かれたという大阪の市場関係者の話も聞いている。

 こういう厳しい商談は何も1社だけがやっていることではないが、このような取引だけでは伸び悩むだろうというのが生鮮流通の現場にいる人間の見立てである。

 既に国内の農水産品業者は低価格圧力の影響で青息吐息である。コロナの影響でさらに厳しい状況に置かれている業種も多い。DSなどの量販店が価格圧力を強める中、利益の高い飲食店向けで何とか耐えていた生産者も多かったが、昨年から断続的に続く緊急事態宣言と外食産業のフリーズで音を上げてしまっているところも多い。

 もちろん、その過程で生産者が集約しコスト削減などが進めばいいのだろうが、農業水産業ともにそこまでの体制が取れるわけではない。

 現状でも、いくつかの売れ筋の食品は供給が追い付かず、高値になっているため、買い付け量を増やして値段を下げさせるという昔からの手法も通じなくなっている。特に、海外での値上がりが激しい水産品にその傾向が強い。輸入食品は円安だけでなく、中国やアメリカの需要回復などの理由で高騰している。アフリカのタコのように、とんでもなく上がっている輸入品もある(参考記事)。

 また、国内の生産者はこれ以上の流通側の圧力、価格引き下げ要請に耐えられないとして、産地としてまとまる方向性を見せている(参考記事)。産地形成をすることによってコストを削減し、小売業の求める価格に応じようという活動も見られる。

九州を中心に展開しているトライアル(写真:picture alliance/アフロ)