「順調にワクチン接種が行われている。早ければ8月ぐらいから、国内旅行の募集状況は一気に回復するだろう」

 6月上旬、ある大手旅行会社の幹部はこう語った。年末年始にはワクチンがほぼ行き渡り、ホテルや旅館は予約できなくなるだろうとの予測も示した。海外旅行に関しても同じような傾向とのことで、都内の中堅旅行代理店は年明けの以降、高所得者層を対象にした欧州方面のツアー企画準備に入っているという。

 ワクチン接種のスピードアップは、あらゆる分野に好影響をもたらす。日本経済にとってこの上ない朗報であり、菅首相にとっても待ちに待った吉報となる。

 確かに現在は、外食産業の壊滅的危機に有効な策を打てているとは言えず、東京五輪開催に対する国民の不信感も根強く、政権運営は綱渡りだ。

 それでも、内閣支持率は低くても30%台前半にとどまっており、高ければ40%前後を維持している。政権が瓦解するような気配は全くなく、党内の雑音も少ない。このままワクチンが行き渡り、東京五輪を小規模で手堅く開催できれば、菅政権は完全に息を吹き返す。

総選挙、自民は10~20議席減程度か

 もっとも、これだけ国民に「自粛」を要請し、怨嗟の対象になっている菅政権だ。永田町には正反対の見方もある。政界関係者の中には今秋の衆院選の情勢について「自民党は30~40議席減らす。菅首相は退陣だ」と見る者が実は多い。理由を問うと「菅首相では選挙は戦えない」「五輪強行が裏目に出る」「政治とカネの問題も大きい」といったものがほとんどだ。