ならば数字を大まかに点検してみよう。

 衆院の定数は465、過半数は233。現在の自民党の議席数は277(議長含む)である。仮に45議席減らせば単独過半数を割る。この場合、菅首相の退陣は確実となる。

 ただし、45議席減のシミュレーションは難易度が高い。まず、立憲民主党の小選挙区での公認候補者数(内定含む)は5月上旬時点で約210人。全小選挙区(289)の7割程度である上、過半数(233)にも届いていない。衆院選まで残り3カ月余でどこまで擁立できるかにもよるが、自民党から45議席以上を奪える勢いはなく、その環境も整っていない。内閣支持率や世論の動向だけで45議席が減るほど選挙は単純ではない。小選挙区制では候補者数が党勢の基数となる。

 自民党は公明党に譲る9選挙区を除く280選挙区のうち、5月上旬までに265を固め、さらに複数候補が公認を目指す選挙区が7もある。空白区はごくわずかにとどまっており、臨戦態勢に入っている。

 選挙実務に通じた野党関係者は、

「立憲民主党は今の状況では、風が吹いても140議席程度しか取れない。候補者が少ない。『かかし』を立てて初めて比例票が増える。内閣支持率が今後上がることを考えれば、自民党は悪くても20議席減ぐらいではないか」

 との認識だ。

総裁選→衆院選のシナリオ

「衆院選で勝利すれば総裁選の必要はない。すなわち無投票だ」との意見が、自民党内で表面化してきたのは今年1月下旬である。いわゆる「衆議院選を総裁選前にやり、総裁選は無投票で済ませる」という構想だ。

 9月末に自民党総裁の任期が切れる。党員投票の日程や衆院議員の任期を勘案すると、「9月6日告示、9月18日投開票」の線がある。菅首相は状況次第では、総裁選に正面から挑み、党員投票を通じて党を活性化させ、その勢いで衆院選に臨むだろう。安倍晋三前首相、麻生太郎副総理兼財務相が対抗馬を立てる構えは現時点ではなく、岸田文雄氏らと再び総裁選を行えば圧勝するとみられる。

 なお、筆者は昨年12月、任期満了、衆院解散、いずれの場合でも、衆院選投開票は10月17日であると予測した。今もこの予測は変わっていない。最近は先に触れた「無投票の総裁選」を前提に「10月10日説」もささやかれ始めているが、むしろ筆者はこの「17日」が軸だと思っている。

(参考)来年の総選挙、菅首相の本命は「10月17日」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63346