菅首相主導で「政治日程」を組めるのは、繰り返しになるが野党の弱さにある。6月16日の国会会期末に向け、立憲民主党は内閣不信任案の提出を検討しているものの、踏み切れない公算が大きいだろう。即時の解散を迎え撃つ覚悟があれば流れも変わるが、現状はそういう雰囲気ではない。
菅政権が防戦一方でありながら政権を維持し、野党が低迷している背景には、ワクチン接種に否定的な姿勢がある。立憲民主党の枝野幸男代表は5月26日のラジオ番組で「菅首相はワクチン頼みだ。ワクチン頼みでない抑え込みに舵を切らないとだめだ」と厳しく批判した。国民が熱望しているのは全世代へのすみやかな接種である。世論をつかめていない野党に菅政権は常に助けられていると言える。
来年の参院選を乗り切れば長期政権
菅首相の試練は、むしろ来年夏の参院選である。コロナが一定程度収束した局面で、どれだけ経済状況が好転しているかがポイントとなる。衆院選で敗北して首相が辞任した例は、自民党に限っていえば過去40年間で1993年と2009年の2回しかない。しかも、いずれも政権交代である。それに対し、参院選の敗北で首相が退陣した例は1989年、1998年、2007年と3回もある。鬼門は参院選なのだ。
自民党内に目を向けると、不安材料はやはりキングメーカーである安倍前首相の動きである。菅首相が台湾へのワクチン提供を迅速に決定したのは、安倍前首相を意識した動きとの分析もある。親中派の二階俊博幹事長ではなく、親台派の総帥である安倍氏との距離の詰め方は絶妙だ。二階、安倍の二大実力者をうまく“扱い”ながら、菅首相は長期政権を視野に入れていると見るべきだろう。