最初の地殻変動は尹錫悦氏の検事総長辞任
大統領選に向け動きがにわかに活発化したのは、3月4日の尹検事総長の電撃辞任だった。政権与党の疑惑追及に積極的姿勢をとってきた尹氏は、検事総長として初の職務停止命令や懲戒処分を受けたが、これをことごとく乗り越えてきた。その尹総長に辞任を決断させた直接的なきっかけは2月9日、民主党内の強硬派が主導して、重大犯罪捜査庁設置法案が発議されたことであろう。尹総長は周辺に「民主主義と法治主義守護のために検察に残っていてはこれ以上すべき仕事がない」と語っていたという。
重大犯罪捜査庁ができると、検察の捜査権は完全に奪われ、検察は「起訴」と「裁判の管理」だけを行う組織に格下げされる。政権与党がどれだけ牽制しても不正の追及をやめようとしない検察潰しの意図は明らかだった。
尹氏が辞任すると、韓国国民は同氏を次期大統領選挙の有力候補と見なすようになった。尹氏本人は大統領選出馬について立場を明らかにしていないが、世論調査では尹氏の支持率が上昇した。
また、政権交代論も強まった。3月9~11日に実施されたギャラップの世論調査では「政権交代論」が48%、「政権維持論」が40%だった。「政権交代論」は昨年10月には39%に過ぎなかったが、秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官と尹錫悦検事総長の対立を経て、中道層の民心が変化したことで交代論が強まった、と分析されている。