最大野党・国民の力で巻き起こった「李俊錫旋風」
そうした中で、前述のように「国民の力」の代表選の予備選で、国会議員経験のない36歳の李俊錫元最高委員が、党重鎮議員らの得票を上回って1位となった。
予備選挙前から李俊錫氏の支持率は上昇していたが、党内の予備選で同様の結果を出すことは容易ではないとの観測が強かった。ところが「李俊錫旋風」が現実となり、一気に韓国の政界地図を塗り替える可能性が取りざたされるようになった。
李俊錫氏はこれまで国会議員に3度立候補したがいずれも落選している。その李氏が今回、党の重鎮であり国会議員経験の豊富な羅卿媛(ナ・ギョンウォン)前院内代表、朱豪英(チュ・ホヨン)前代表代行らを破って予備選を勝利するという前代未聞の壮挙は、ソウル・釜山市長選挙で示された若者を中心とする韓国社会への不満、既存の政治に対する不信が急速に高ぶっていることの表れだろう。
若きニュースターの誕生に、与党サイドにも動揺が広がっている。
民主党は、もしも来月の本選で李俊錫氏が「国民の力」の代表となり、若い有権者の支持を集めるようになれば、来年3月の大統領選挙では野党候補の勢いが増すとして大きな懸念を抱き始めている。同党幹部は「国民の力は古さや頑固さの象徴だったが、新たな変化が生まれている」と警戒した。また、同党の別のベテラン議員は「野党支持者が政権交代を強く望んでいることを示すもの」だとコメントしている。
ソウル市生まれの李俊錫氏は、ハーバード大学に国費留学し、経済学とコンピュータを学んだ。2011年2月、大統領選挙への出馬を準備していた朴槿恵氏にスカウトされ、以来2015年5月まで当時の与党「セヌリ党」(国民の力の前身)の非常対策委員会委員として活動したという。14年には同党の革新委員会委員長に就任した。しかし、朴槿恵・崔順実(チェ・スンシル)スキャンダルが表面化するや朴大統領を批判し、弾劾を支持する側に回った。
党では社会的弱者の支援に携わり、ビジネスの経験もある。同氏は旧来の政治を容赦なく批判し、就職難や格差拡大に苦しんでいる若者たちの声を代弁する。同氏は国民の力の古い体質のイメージを覆す力を持っている。