(星良孝:ステラ・メディックス代表取締役、獣医師)
米国は法改正によってワクチン注射が可能な職種を5月に拡大した。現在は薬剤師の他、歯科医や獣医師などがワクチン注射を打てるようになった。ワクチン接種先進国はワクチン注射の職種を拡大している。日本では接種の担い手不足が問題になっており、歯科医師が条件付きで接種可能だが、海外から参考にすべきところは他にもある。今回はワクチン注射の職種の動向について考察する。
米国でもワクチン接種の担い手確保は問題になっている。ワクチン注射に必要なスタッフの数を計算するためのウェブサイトが存在するほどだ。この状況を解決するため、ある法律が法改正された。「公共の準備と緊急事態への備えに関する法律(Public Readiness and Emergency Preparedness ACT:PREP Act)」と呼ばれる法律だ。
既にバイデン大統領によって2回改正されており、ワクチン注射が可能な職種が段階的に広がっている。例えば、これまでの法改正によって、新型コロナワクチン接種の資格を一つの州から得た場合、その資格は他の州でも適用可能になった。州ごとに医療資格を認定する米国ならではの規制緩和と言える。
さらに、医療関連免許が失効した人でも、5年以内ならばワクチン接種に参加できるという規制緩和や、連邦政府の職員にワクチン接種を認める規制緩和も過去2回の法改正で実施された。
そして、3回目の今回はワクチン注射が可能な職種をさらに広げたのが大きな変更点になっている。具体的には、歯科医や獣医師の他、パラメディクスと呼ばれる救急隊員、助産師、検眼士、薬剤師、医学生、看護学生などが幅広くワクチン注射に対応できるようになった。
連邦政府が専用のウェブサイトを設けており、上記で挙げた職種の有資格者がワクチン注射の担い手になれるかどうかも確認できる。有資格者がボランティア活動をする場合、自分で確認可能な仕組みを用意しているわけだ。
ワクチン注射の担い手確保に関しては、州単位で規制緩和を進める動きもある。例えば、米国バージニア州では歯科医や歯科衛生士、獣医師、救急隊員、検眼士、医療学生がワクチン注射できるように規制を緩和していたが、この4月に医療関連の有資格者を幅広く募集対象に加えた。既に募集を開始している。