この宗教教職人員管理弁法が施行されるまでの「宗教教職人員記録弁法」「宗教活動場所主要教職記録弁法」(2006年以降施行)では、各地の宗教団体に認められれば、その地方で聖職者として登録されていた。だが新管理弁法では、中国共産党統一戦線部直属の7大宗教団体が認定する聖職者でなければ聖職者として登録されなくなった。このことから、「家庭教会」(政府に認可されていないキリスト協会)での牧師などの活動は、さらにやりにくくなったといえる。

 また、第32条、33条によれば、宗教関係者は国家宗教事務局が作成したデータベースで個人情報管理が強化され、賞罰の有無や活動なども記録されるようになった。宗教関係者が省を越えて移動して宗教活動を行うときには事前に地元と行先の宗教管理当局に報告し、その宗教活動が1年を超えるときにはデータベースの登録先も変更しなければいけなくなった。

 第35条では各宗教団体が宗教教職者を育成するときには、政治教育、文化教育、宗教教育を強化し、教職者グループ全体の資質を高めることとし、教職者の留学に関しては各省、自治区、直轄市宗教団体がルールをつくるように求められた。

習近平の政治スローガンを説く牧師

 この宗教教職人員管理弁法が施行されて間もない5月2日、浙江省温州市のキリスト教会での説法の様子を撮影した動画がインターネットに流れた。動画では、牧師が聖書を引用しながら、習近平の政治スローガンである「初心を忘れるな」「使命を胸に刻め」といった言葉を繰り返し、共産党幹部の初心や、毛沢東主席時代の使命、鄧小平時代の使命、習近平時代の使命などについて説いていた。

 浙江省の教会で牧師としての長い活動経験がある米カリフォルニア州在住の劉貽牧師は、米国の政府系メディア「ラジオ・フリー・アジア」の取材に対し、「中国共産党の管理下で、キリスト教のいわゆる牧師、宣教師たちの多くがすでに自覚的に共産党の立場に立つようになっており、教会での説法で共産党の政策の政治宣伝を行っている。ネットで流れている温州市の教会の説法は、聖書を説いているのではなく、(聖書を使って)共産党の政治宣伝を行っている」と嘆いていた。