「しょうもない犯罪やってナカ戻ろうか」

 今回紹介する大阪ABCテレビのドキュメンタリー番組は、協力雇用主に雇用されたA氏(23歳)の就労を通した更生への日常に密着するという内容だ。

 このA氏は、2020年11月まで少年刑務所に入っていた。その後、実家が引き受けを拒否したため、更生保護施設に入所しつつ、ビル管理の会社に就職した。

 筆者は、入社当初のA氏と話す機会があり、その時の心境を尋ねてみた。すると、意外な言葉が返ってきたため、非常なショックを受けたことを覚えている。

「(少年刑務所を)出る時って、すごく嬉しかった。でも、その嬉しさは一週間も続かなかったんですよ。何というか、孤独。昔つるんでいた連中が、相手にしてくれないんですよね。仕事しているやつは忙しいし、家庭持っているやつは、そんな暇ない。何か、すべてが変わったという感じで、寂しかった。これなら、もう一遍、しょうもない犯罪やってナカ(少年刑務所)に戻ろうか・・・って考えたんです」

 筆者も、保護観察が終わった途端に再犯に走り、刑務所に逆戻りした人を複数知っている。だが、そういう人の大半は年配の人であったから、20代前半の青年の口から「ナカの方が良かった」という話をされた時は、正直、戸惑いを隠せなかった。

 A氏は、特殊詐欺――いわゆる「オレオレ詐欺」で逮捕されている。だから、「元反社会的集団加入者」とラベリングされ、銀行口座なども持てない。若者でも、やり直しに苦労する厳し過ぎる排除社会の現実を垣間見た気がした。

 今回のABCテレビのドキュメンタリーでは、リポーターがA氏の過去を時系列に尋ねてゆく。以下では、その一部を紹介する(なお、発言を文章化するにあたって、A氏の話を筆者が簡潔にまとめ編集している)。

手っ取り早く金を手にしようとオレオレに

リポーター:オレオレ詐欺やったんですよね。大体、いつ頃から手を染めました?

A氏:19歳くらいから齧りました。少年院出てから、引き受け先(協力雇用主)で仕事しましたけど、「お金欲しい、早い金欲しくて」オレオレに走りました。

リポーター:その後のことを考えずにやってしまった?

A氏:働き出したら、アタマ真っ白。いまの生活を何とかしたいとしか考えなかったです。友達にイイ顔したいというチンケなプライドもあったかもしれません。