一番欲しいのは「人とのつながり」

 でも、ある種の人は寄ってきます。自分を利用したい人たちですね。分かっているけど、一番欲しいのは、人とのつながり――温かみなんです。だから、利用されても、自分のこと分かってくれる、理解してくれるから、付き合ってしまう。

 最近まで、友達が一番だと考えていました。それは、温かみを求めていたからです。ムショ帰りの自分を相手してくれるのは、悪い人間。真面目な友人は、離れていく。だから、ナカで一緒だった人に会いに行きたいと思う。確かに、ナカはシンドイけど、同じ釜の飯食って、同じ部屋で寝る。一緒に盛り上がり、喜怒哀楽も共有できるんです。

リポーター:でも、今は悪い仲間と一緒じゃなく、踏みとどまっていますよね。

A氏:出所して1カ月くらい経ったころ、(現在の勤務先の)社長と出会った。踏みとどまれている理由は、社長が自分の思いを理解してくれたことが大きいです。周りにそういう人、あまり居なかった。社長も過去に世間の冷たさを感じた経験があります。だから、社長の言葉は胸に刺さります。

 この社長についていけば、自分もこの社会で生きていける気がしました。相談もめっちゃします。でも、この会社、一度辞めたんです。

社長の助言に「カチン」と

リポーター:なぜ、辞めたの?

A氏:ある時、社長から「現在の交友関係を、一度清算して、誰が本当の友達かよく考えてみろ」って言われました。これでカチンときたんですよ。何で社長に俺の友達関係のことまで言われんといかんのやって思って。

 だから、「俺、明日から来ません」って言って辞めました。そして、放浪して、先輩の働いている会社に入ったんです。そうしたら、直ぐに社長の言ってたことが分かった。

 自分の思い違いがわかりました。本当に仲間、友達と思っていた人を頼ったけど、裏切られちゃった。結果的に、全部無くなりました。

 外と揉めたらケツ持っちゃるとか言いながら、実際は助けてくれない。金は無心される。自分は友達と思っていたけど、相手は友人とは思っていなかったんです。利用されているだけだった。

 この会社辞めて、友人の働いている会社で働きました。そこで、自分が友達と思っていた人から、ガチャガチャにされた――飲み会の席で、バチバチいかれた(殴られた)。その会社に入ってすぐに手のひら返されて、殴られたり、暴言吐かれたりの日々でした。

 最初は社長の言ったこと――交友関係を一度清算してみて、よく考えろということが分からなかったけど、転職して、ものの3日くらいで、身をもって分かりました。こういうことかと。社長は、経験しているから、そんなアドバイスくれたんやって理解できました。だから、あの社長の会社で、もう一遍頑張らせてもらえないかなって思ったんです。