実は米中の利害が一致する北朝鮮とアフガニスタン
北朝鮮とアフガニスタンは、米中にとって似たような位置づけにある。まず、米国は両国との関係正常化を腹の中では望んでいる。特に、北朝鮮には核兵器を最低でも使わせないための約束事を作りたいと考えている。
他方、両国と国土を接する中国は、北朝鮮に対しては、旧冊封の慣習に戻り、宗主国として北朝鮮をコントロールしたいと考えているのは間違いない。アフガニスタンに対しても、内紛を収め、インド洋に出るためのルートの一つとしたいはずだ。その背景には、アフガニスタンで生成される麻薬の入手ルートにしたいとの思惑もあるだろう。
北朝鮮とアフガニスタンにおいて、本来ならば米中は協調というより陣取り合戦の競合関係にあるが、これが地政学を考えた際の外交の不思議なところで、両国は協力関係を作る余地がある。つまり、北朝鮮もアフガニスタンも、米中が冷戦時代の米ソのようにゼロサムゲームだとして獲得に動かなければ、両国からの利益を分かち合うことができるのだ。
具体的に言えば、中国が北朝鮮の旧宗主国として北朝鮮軍の動きを管理できれば、「北の核」の脅威は急減する。そこに米国が貿易などを通した経済的メリットを持ち込めば、金正恩政権は利益を優先させるようになるだろう。「平和の恩恵」だ。その際、韓国が北朝鮮に飲み込まれていく可能性が残るものの、それは米中にとって気にする問題ではない。
一方、アフガニスタンは2001年以降、タリバンとそれ以外の部族との争いが絶えないが、タリバン政権の力は外国の軍事力では掃討できず、この政権を再び認める以外にない。その際に、北から中国、南から米国が支えるということになれば、政治的にも経済的にも安定する。少なくとも米中両国はそう考える可能性が高い。
より達観すれば、北朝鮮では中国が汗を流して米国がメリットを得る、アフガニスタンでは米国が撤退して中国がメリットを得る、という棲み分けもあり得るかもしれない。
バイデン政権は、トランプ政権時代の「アメリカファースト」による利益優先外交ではなく、イデオロギー対立を意識した価値観外交を選択した。だが、価値観外交をとれば、ウイグル、香港、台湾での解決策はない。バイデン政権もそれは重々承知の上だ。それでは、この3つの国と地域はどうなるのだろうか。