自助も公助も受けられない風俗嬢はどうすればいい?
坂爪:分からない人には本当に難しいんですよ。そもそも確定申告をしていないなどの理由で役所に近づきたくないという人もいます。相談が相次いだ昨年春のピーク時も本当は付き添いまでできればよかったのですが、当時はリソースが限られており、申請方法を伝えることしかできませんでした。
──自助努力の一言でもかたづけられませんね。
坂爪:自助努力にも限界があります。長年、性風俗の世界で働いてきた人が昼の仕事に就くのは、履歴書の面からも、生活のリズムという面からも簡単ではありません。心身の調子が悪い人が性風俗で働くのは自分のペースで収入が得られるからです。そんな女性が出勤してもコロナで全く稼げず、所持金が尽き、寝泊まりしているホテルやネットカフェを追い出された後、状況を改善させるには自助努力だけでは不可能です。
今回のコロナ禍では共助としての性風俗業界が崩壊した結果、自助も通じず、公助にも頼れず、多くの人たちが奈落の底に突き落とされました。これが1年間、風テラスの活動を通して見えた現実です。
──坂爪さんはホワイトハンズで射精介助サービスを展開しています。これはどういうものでしょうか?
坂爪:脳性麻痺やALS、筋ジストロフィーなど、重度の身体障害のために自力でマスターベーションできない人のための介助サービスです。そんなサービスは必要なのか、男性の射精介助を女性がやるのは性搾取ではないかなど批判もたくさんいただきます。ただ、射精は障害者の自尊感情に関わる問題であり、ケアすべきだというのが私の考えです。介助するスタッフの性別は利用者に委ねられていますが、スタッフを選べるわけでもありません。
──なぜ性に関する分野に注力しているのでしょうか。
坂爪:僕が高校生だった90年代後半に、援助交際が社会問題になりました。その時に、社会学者が援助交際の是非について議論しているのを見て、性風俗の業界に関心を持ったんです。援助交際はそもそもいいのか悪いのか、その行動に自己決定権はあるのかどうか、といった議論です。それで社会学に関心を持った僕は、東京大学で迷わず社会学を専攻しました。ゼミは、フェミニズムとジェンダー論で有名な上野千鶴子教授の「上野ゼミ」です。
──上野ゼミで性風俗について研究したのですか?
坂爪:フェミニズムの観点から見れば性風俗はあり得ない世界ですが、上野先生は学生のやりたいことを尊重される方なので、特に何も言われませんでした。現に、ゼミに在籍していた2003~2004年には新宿・歌舞伎町や池袋のイメクラなどを取材し、「恋人プレイ」について分析していました。どういうプレイだと恋人だと感じるのか、といった研究です。ゼミ生の大半は女性なので、他のゼミ生からは顰蹙を買いましたが・・・。
──なぜホワイトハンズを?