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性産業が存在することで救われる女性たちもいる。(写真はイメージ)

(文:栗下 直也)

性風俗のいびつな現場 (ちくま新書)
作者:坂爪 真吾
出版社:筑摩書房
発売日:2016-01-07

 女性の貧困がメディアを賑わして久しい。働く単身女性の3人にひとりが年収112万円以下との統計もある。

 こうした貧困女性の中でも福祉の網から漏れ落ちた人々のセーフティーネットとして機能してきたのが性産業だ。

 性産業の現場で何が起きているのかに迫ったルポは少なくない。本書でも母乳を欲しがる男性向けの風俗店や30分3900円で違法行為ありの激安風俗店、熟女専門店、他の風俗店では採用されない女性ばかりを集めた「地雷専門店」で働く女性や経営者が登場する。

 印象的なのは、地雷専門店の経営者のインタビューだ。同店では年齢や容姿は不問で幅広い女性に門戸を開く。生活の手段が限られた女性に稼いでもらいたいために、原則、応募者全員採用だ。スリーサーズが全て1メートル超えでも入店OK。福祉のみならず風俗の世界からも押し出された女性たちの受け皿として機能している。