(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)
韓国で1人のトランスジェンダーの死が、波紋を呼んでいる。
3月3日午後、ソウルから100キロほど南下した忠清北道清州市の自宅で、ピョン・ヒスさんが遺体で発見された。自殺とみられている。
韓国の男性には兵役の義務があり、ピョンさんは兵役中の2019年11月の休暇中、タイで女性への性転換手術を受けた。これに対し軍は除隊措置をとっていたが、一方のピョンさんは、裁判所から性別訂正許可が下りた去年(2020年)2月以降、女性兵士として服務の継続を主張していた。
3月4日付のハンギョレ新聞によれば、ピョンさんはこのところ、「とても疲れました。人生も、直面する嫌悪も、私に対する憎しみも」と周囲の人に漏らしていたという。
このニュースは、遺体が発見された当日のテレビでの報道番組や、翌日の韓国各紙が報じたほか、アメリカのCNNやイギリスのBBCも取り上げ、国内外に波紋を呼んだ。