2月22日、衆議院予算委員会での菅義偉首相(写真:Motoo Naka/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 放送事業関連会社の「東北新社」に勤める息子が利害関係のある総務省幹部を接待していた問題は、ついには“お気に入り”とされる山田真貴子内閣広報官が総務審議官時代に7万円を超える接待を受けていたことが発覚して、膝元にまで飛び火した菅義偉首相。いつの間にか息子が政権にダメージを与えている様を見て、ギリシャ神話のエディプス王が頭に浮かんだ。父王に捨てられたエディプスが、知らないうちに父王を殺し、王となって生母である先王の王妃を妻とする物語だ。フロイトの説くエディプス・コンプレックスに通じる神話で、大きな権力を手にしていく父親に、息子のほうでもどこかでコンプレックスを抱いていたのかも知れない。

違和感多い首相発言

 その菅首相が就任してから、来月で半年になるが、その発言を聞いていると、どうも言葉に違和感を覚えることが少なくない。もっと言えば、自分の話した日本語の意味がわかっているのか、首を傾げたくなる。その言葉を、いくつか指摘してみる。

 まず、菅首相がやたらに使う「スピード感」という言葉。例えば、今年1月の今国会冒頭の施政方針演説でも、はっきりこう述べている。

「まずは、一日も早く(新型コロナウイルスの)感染を収束させ、皆さんが安心して暮らせる日常、そして、にぎわいのある街角を取り戻すため、全力を尽くします。

 未来への希望を切り拓くため、長年の課題について、この四カ月間で答えを出してきました。皆さんに我が国の将来の絵姿を具体的に示しながら、スピード感を持って実現してまいります」

 この「スピード感」という言葉が、内閣の共通認識のように、他の閣僚も使うようになった。最近では、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長が就任した直後の会見でも「スピード感」という言葉を用いていた。

 だが、この「スピード感」とは、なにを指す言葉なのだろうか。「スピード感を持つ」とはなにか。