タイムリミットの10数分前、閉会式で講評を述べるため仮設ステージに上がった恭平の目に、両手に杖を突きながら片足で懸命に走るアスリートの姿が飛び込んできた。

「皆様ご注目ください!地元甘宮市から参加された片足のアスリート、安本さんが間もなくフィニッシュされます!」

 絶叫する恭平に促された観客が環視する中、フィニッシュのテープを切った安本さんが杖を投げ出して倒れ込んだ瞬間、嵐のような拍手と大歓声が湧き起こった。

 大会の翌日、ハワイ島のコナ商工会議所から1日遅れで木製の盾が届いた。

 全ての表彰が終わった後の栄冠を誰に贈ろうかと思案するまでもなく、多くの人に感動と勇気を与えた「片足の鉄人」安本さんに贈ることで衆議一決した。

 マスコミを招待しての授与式での目撃談。

「あなたの信条は何ですか?」

 インタビュアーの問いに答えた安本さんならではの言葉は、珠玉のメッセージだった。

「信条は『ネバー・ギブ・アップ!』です」

「私の考える『ネバー・ギブ・アップ!』とは、途中で投げ出すな!の意ではなく、何かを始める前から『できはしない』と諦めてはいけない!と言う意味です」

 19歳の時に交通事故で左足の太腿から下を切断しながらも、スキーや水泳に挑戦し続けた安本さんの言葉だけに、胸に響いた。

 数か月後、小学6年生が書いた『二十歳になったぼくへ』と題する作文が届けられた。

「前夜祭での掛け声」「片足での挑戦」「少年の作文」それらの一つひとつが、大会を継続、発展させていく使命感とモチベーションになった。