オフィス不要論もチャンスに
ヴィスが最初の仕事を手がけた2003年から時代は大きく変わった。少子高齢化の影響で、会社が人を選ぶ時代から、人が会社を選ぶ時代に変わった。昭和から平成にかけては「給料がいい会社で働きたい」といった声が多かったが、今やお金は多数ある尺度の一つに過ぎず、働きがい、楽しさ、といった基準で企業を選ぶ若者も増えている。すなわち、社員に給与以外の価値も提供できる企業が選ばれる時代になったのだ。
「正直に言うと“ようやく時代が追いついた”と感じています(笑)。実際、私たちにオフィスのデザイン・施工を依頼される企業は、伸び盛りの企業やベンチャーが多いんです。価格帯のボリュームゾーンは1000万~2000万円ほどで、ヒアリングのあと3~6カ月の工期でリノベーションする場合が多いですね。ベンチャー企業にとって、この金額は大きいと思いますが、オフィスのデザインが変わることで、社員が会社に誇りを持て、それがインナーブランディングからアウターブランディングに活き、もっと言えば採用にも効果を発揮します。お客さまはそこに価値を感じてくださっています」
今は新型コロナウイルス感染症の拡大によりテレワークの機会が増え、“オフィス不要論”すら語られるようになっているが、中村氏は「むしろチャンス」と話す。
「さまざまな働き方が求められるようになれば、それだけオフィスに多様さが求められるようになるはずです。確かにオフィスの面積は縮小傾向にありますが、今後、オフィスは多彩になっていくはずです。例えば今、当社は“アフターコロナの『はたらく』を考えるプロジェクト”を行い、飛沫防止パネルの有効利用や、オフィスレイアウトの工夫でソーシャルディスタンスがうまく創出される仕組みなどを考案しています。オフィスをより良くしていく手段はたくさんあるのです」
最後に、中村社長はこう語る。
「時代の変化についていくのでなく、それを乗り越える、いや、乗りこなさなきゃいけない、それが『起業』だと思います。今は働く人たちがまるでディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンに行くような気持ちで出社できる会社をつくりたい! と考えています」
(企業取材集団IZUMO)