この戦略に精通している安全保障専門家によれば、米国のインド太平洋戦略における台湾の描写から、米国は台湾を中国から攻撃されないよう牽制するだけでなく、必要であれば中国の侵攻を撃退するとしている、という。つまり、台湾を守るためならば軍事出動も辞さない、ということだ。

 こうした機密文書をあえて今公開したのは、おそらくはバイデン政権が対台湾政策や尖閣問題、そしてインド太平洋戦略についてトランプ政権の方針を転換させるのではないか、という懸念があるからだろう。台湾接近とインド太平洋戦略はトランプ政権の揺るぎない政治遺産として残さねばならない、というわけだ。

中国政府とメディアの反応

 ちなみに中国外交部の趙立堅報道官はこの機密文書公開について、「米国はインド太平洋戦略を利用して中国に圧力をかけ、地域の平和と安定を破壊しようという邪悪な動機がある」と批判している。

 また「環球時報」など中国メディアは、ポンペオ長官の米台交流規制撤廃宣言について「ポンペオが理性を失って狂った」と表現し、「米国と台湾民進党当局にはっきり自覚させなければならないのは、もし彼らが大胆にもポンペオを任期終了前に台湾に訪問させるといった演出を行うのであれば、北京は山を動かして海を埋めるような反応をするだろうということだ」と威嚇した。

 さらに環球時報は米ブルッキングス研究所のトーマス・ライターのコメントも引用して、「ポンペオの政治的動機は、バイデン政権誕生後の最初の数週間に中国との関係を膠着状態に陥らせ、バイデンの対中弱腰姿勢を変えさせることだ」と解説し、こうしたトランプ政権の駆け込み政策は次期バイデン政権への嫌がらせである、と論評している。

消えた「自由で開かれた」という表現

 さて、バイデン政権が誕生すると対中政策が親中的になっていくのかどうか。

 一部識者はバイデン政権の方がトランプ政権より対中姿勢が厳しい、という見方をしているようだが、私はやはりバイデン政権になれば、トランプ政権がこの2年ほどの間に進めた対中包囲網や対中デカップリング(切り離し)政策、そして対台湾政策やインド太平洋戦略は後退するだろう、と見ている。

 理由は、たとえば台湾政策については、バイデンチームは選挙戦当時から「一つの中国政策」の堅持を主張しているし、両岸問題の平和解決支持を継続することが台湾人民の願いであり最大利益だという立場だ。これは、オバマ政権時代の現状維持政策と変わらない。

 トランプ政権は現状維持から対台湾接近を進め、それがたとえ中国の軍事的威嚇を招きかねないとしても、台湾を守るために中国を撃退するという方針を決めていたことが、今回明らかにされた機密文書に書かれていたわけだ。