中国・北京の天安門広場(Pixabay)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 新年早々、中国共産党に関して気になる条例がいくつか修正された。1つは「中国共産党統一戦線工作条例」(統戦条例)、もう1つは「中国共産党党員権利保障条例」だ。これらの条例の修正は何を意味するのだろう。よくよく読んでみると、薄ら寒いものを感じないだろうか。

台湾統一に向けた動きを想定か

「統戦条例」は2015年5月に「試行」という形で実施されていたが、今回「試行」という言葉を取って本格的な施行となった。

 中国共産党の統一戦線部とは在外華人、在外党員が祖国統一のために力を合わせる作戦、戦略を指揮する部署であり、その目標は具体的には台湾統一や釣魚島(尖閣諸島の魚釣島の中国名)の占領などだ。在外華人工作を指揮して、中国共産党の世界覇権を実現するための世論誘導や大プロパガンダ工作を展開する任務も含まれている。

 5年8カ月たった今、思い出したようにこの条例の「試行」の2文字を外し、内容を更新したのは、おそらくは対台湾および在外統一戦線工作任務上の必要性に迫られたからだろう。

 つまり、台湾統一に向けた動きを中国が本格的に想定して準備しているということではないだろうか。

 対台湾統戦任務について、旧条例ではこうあった。

「中央の対台湾工作大政治方針の執行を貫徹し、“1つの中国”原則を堅持し、台湾独立分裂活動に反対し、台湾同胞と広汎に団結し、両岸関係の平和発展の政治、経済、文化、社会基礎をしっかりと深め、中華民族の偉大なる復興を実現する中で祖国統一の大業のプロセスを進める」

 修正された条例での台湾統戦任務については、こうなった。

「党中央の台湾工作大政治方針の執行を貫徹し、“1つの中国原則”を堅持し、在外国内外台湾同胞と広汎に団結し、壮大な台湾愛国統一パワーを発展させ、台湾独立分裂活動に反対し、祖国平和統一プロセスを絶えず推進し、中華民族の偉大なる復興の実現の心を同じくする」

 修正のポイントは、台湾を含む在外華僑への呼びかけとなっており、「台湾愛国統一パワー」という言葉や、「祖国平和統一プロセスを絶えず推進する」という文言が加わっていること。そして「両岸関係の平和発展のための政治、経済、文化、社会基礎をしっかり深める」という言葉が削られたことだ。これは、「現状維持」を前提として、両岸関係を深化させることが基本だった中台関係をドラスティックに変えていく意思が込められているのではないかと想像される。しかも、その任務は中国人と台湾人だけが負うものでなく、世界各国に散らばる華僑・華人も動員されるということだろう。