商店街を歩いてみると、確かにぱっとしない風情である。良く言えばレトロだが、はっきり言ってしまえば、老朽化した時代遅れの商店街という様相だ。シャッターが下りている店も少なくない。一方で、店によっては派手な色使いのPOPを飾り、修学旅行の生徒をターゲットにしたようなお菓子やキャラクターグッズを並べているところもある。今や日本中の観光地の商店街が原宿の竹下通り化しているが、その侵食がここでもみられる。旅慣れた大人ならうんざりしてしまう人もいることだろう。

 坂井市は、この“陳腐化”しつつある傾きかけた観光地を、どのように再整備するのだろうか。

商店街の様子。閉店してからかなり時間が経った物件も見受けられる

新幹線開業が直接的なきっかけに

──なぜ東尋坊を再整備することになったのでしょうか。

谷根康弘氏(以下、敬称略) 海岸自体の満足度は高いんですが、リピーターが少なく、滞在時間が短いんです。どちらかというと実態は人気のない観光地になってしまっているんですね。“ザ・観光地”と言いますか、どこにでもある、ありきたりな観光地化しすぎていることが大きな理由の1つだと考えています。駐車場の呼び込み競争も激しく、それに対するクレームも来ます。

 このままじゃダメだろうということで、再整備しようという話は以前からあったんです。それが具体的に動き出したのは、ちょうど1年ぐらい前からですね。2020年度から市で予算を取って本格的にやろうということになりました。

福井県坂井市 産業環境部 観光産業課の谷根康弘課長

──話が具体的に動き出したきっかけは。

谷根 直接的なきっかけは、北陸新幹線の金沢~敦賀間の開業です。いま訪れてくる140万人のほとんどは関西中京圏の方で、マイカーで来られています。新幹線が福井を通るようになれば関東からも誘客が見込めるだろうということで、再整備プロジェクトが立ち上がりました。

東尋坊の位置(Googleマップ)
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──金沢~敦賀間の新幹線開業は当初は2023年春の予定でしたが、1年半延期になってしまいました。計画は再検討ということになるのでしょうか。

谷根 再整備プロジェクトの立ち上げは新幹線の開業が直接的なきっかけにはなりましたが、かなりの規模のプロジェクトですので、そもそも開業に間に合わせようという考えはありません。そのスパンでは、とてもできないプロジェクトなので。

──では完成はいつが目標になりますか。

谷根 10年後ぐらいでしょうか。

──遠大な計画ですね。

谷根 はい。どこかを部分的にきれいにするというような話ではありませんので。