環境との共生が大きなテーマ

──一体どのような再整備を行うのでしょうか。

谷根 心地いい観光地にして、訪れる人の滞在時間を延ばすにはどうすればいいのかを、大学の先生、地元関係者、外部のコンサル会社、関係機関などに加わってもらい検討委員会を設置して検討しました。その結果、大きな方向性として、環境との共生をテーマにすることになりました。

 東尋坊は自然環境を楽しむ場です。だからやはり元の環境に戻すべきじゃないかということです。そのために、人工構造物はできるだけ排除していきます。

 まず、現在の駐車場の多くを緑化します。岩場に行くまでの間に多くの駐車場があるんですが、いま全部アスファルトです。ここのアスファルトを全部はがします。

──全部はがすんですか。ずいぶん大胆なことをしますね。

谷根 土産物店や市が運営している駐車場を一元化して1カ所に集約し、一般の車はそこに停めてもらうようにします。あとは緑に戻して、自然を楽しんでもらい、滞在時間を延ばそうということです。

東尋坊には多くの駐車場がある

──駐車場が減ると、駐車できない車が出てきてしまいませんか。

谷根 現在、ゴールデンウイークなどは、1日に1500台近くの車が駐車場に入ります。でも、それは年に数日なんです。だから常時1500台分のスペースを駐車場にしておく必要はありません。せいぜい500台分の場所を確保しておけば、通常の土日は間に合います。また、これまでの観光業は社員旅行や団体旅行で成り立っていましたが、今はもう個人旅行にシフトしています。なので、大型バスを何台も入れるような駐車場って常時は必要ないんですよ。

 どうしても駐車場が足りないというときは、緑化した場所を臨時駐車場にして使えばいい。通常はキャンプやイベントなどにも使える芝生の広場にしておいて、ゴールデンウイークなどは車を入れられるようにすれば、対応できるんじゃないかと考えています。

──ほかにも自然に戻す場所はありますか。

谷根 いま、商店街の入り口はゆるやかな上り坂になっています。この坂の入り口のアスファルトをはがします。すると、海岸の岩場と同じ岩が出てくるのではないかと見ています。

東尋坊の岩場に至る商店街の入り口。ゆるやかな上り坂になっている

 ここの商店街の入り口には、ビジターセンターをつくる予定になっています。駐車場に車を止めた人にいったんここを通ってもらい、トイレを使ってもらったり、いろいろなインフォメーションを提供したりする施設です。現在は東尋坊に来た人は海岸に出るために坂道を歩いて登っていかなければなりませんが、この施設の中でエスカレーターやエレベータで上ってもらえば、坂道を歩かなくても海岸に出ることができるようになります。

 そして、もしも坂のアスファルトをめくって海岸と同じ岩が出てきたら、ビジターセンターの中に岩を露出させて、岩を鑑賞したり、実際に触れられるようにします。冬場に天候がすごく荒れて海岸まで行けないときも、この中で柱状節理を鑑賞できるというわけです。