〇体外受精無料化

 2017年から、第一子に対して5回まで、第二子以降は4回までの体外受精費用を、全額補助している。2020年2月からは、体外受精にかかる医薬品の100%保険適用を始めた。これによって、体外受精は無制限に健康保険が適用されるようになった。

 また、国営の不妊治療専門機関を、全国に12カ所(首都ブタペスト5カ所、その他7カ所)設置した。

移民に頼らずとも人口増加は可能

 他にも、細々した制度が多々あるが、とにかく子供を産めば産むほど、その家庭の生活が楽になるという社会を目指しているのだ。パラノビッチ・ノルベルト駐日ハンガリー大使が、世界一進んだ少子化政策の成果について語る。

「こうした制度のおかげで、子供を望むハンガリー人は、過去10年で2割増加しています。結婚数は43年ぶりの高水準で、離婚数も60年前の水準まで下がっています。妊娠中絶数も36%減りました。2020年は3万4337組が結婚し、前年比6.7%増です。

 女性の就業者数も、20年ぶりに上昇に転じました。20歳から64歳までの女性の就業率は75.3%まで上昇しています。3歳未満の子供がいる25歳から49歳までの女性の就業率も、2019年に17.9%まで上がりました。

 何より、こうした制度がなければ、2011年以降、10万4000人もの子供が生まれなかったという統計が、制度の正しさを証明していると言えます。少子化対策というのは、最低でも10年はかかる国家の大計ですが、移民に頼らなくても人口を増やすことは、十分可能なのです」

 移民に頼らずに人口減少問題を解決したい――このことは日本も、まったく同様である。菅政権も、不妊治療の保険適用一本槍ではなく、「これでもか」というほどの少子化対策を実践しているハンガリーを参考にしてはどうだろうか。