(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
菅義偉首相は、新型コロナウイルス感染症に関して、12月25日に記者会見を開き、さらなる感染拡大を避けるため、この年末年始について、こう述べている。
「家族や大切な方と少人数で静かにお過ごしいただきたいと思います。一日も早く感染を収束させ、感染が始まる前と同様の日常を取り戻し、希望に満ちた社会を実現するために、是非お力をお貸しいただきますようによろしくお願いいたします」
まったく意味がわからない。
なぜなら、「一日も早く感染を収束」と「感染が始まる前と同様の日常」を取り戻すとは、どういうことなのか。どうやって感染を収束させるのか、いつまでに感染が始まる前と同じ日常を取り戻すのか、そのプロセスや目標設定がまったく不明だからだ。
「これ以上状況を悪化させないために大人しくしていろ」
例えば、2003年に中国、香港、台湾で猛威を振るった新型コロナウイルスのSARS(重症呼吸器症候群)は、前年の11月に発生したとされ、WHO(世界保健機関)が「終息宣言」を出したのは7月5日のことだ。その日までに、市中からウイルスを消し去ることができたことを認めてのことだった。私はその時点まで現地で取材を進めていたから、当時のことも重々承知している。
収束というのであれば、蔓延するウイルスをどのように封じ込めるのか示す必要がある。そうではなくて、首相のいうところは、「これ以上状況を悪化させないために大人しくしていろ」と言っているに過ぎない。