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(高橋 義明:中曽根平和研究所・主任研究員)

 感染症対策の政策目標としてきわめて重要なのは、死者数の抑制である。しかし、12月の累計死者数が1000人を越えた。新型コロナ感染者の死者数の推移から何を考えるべきかを本稿では考察してみたい。

厚労省会合が与えてしまったイメージ

 死者数の評価方法として2つの指標がある。1つは「致命率」(感染者当たりの死者数)、もう1つは「死亡率」(人口10万人当たり死者数)である。

 第2波以降、一部で「重症化や亡くなることは稀で恐れるほどのものではない」、さらには「弱毒化した」との意見までみられた。その根拠の1つとされるのが厚生労働省・新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの資料である。

 第11回の西浦・京都大学教授作成の資料によると、重症化率は1~4月が9.8%、6~8月は1.6%だった。致命率は1~4月が5.6%、6~8月が1.0%だった。これだけみれば重症化も死亡も5分の1に減ったようにみえる。

 しかし、ここには数字のマジックがある。感染者1000人に対して5人が亡くなっていたのが、検査の拡充で感染者が数多く見つかるようになり、感染者1万人に対して5人の死亡ということになったのなら、致命率は10分の1となる。しかし、人口は短期間ではほとんど変動しない。そのため死亡者数が同じであれば、死亡率は2つの時期で違いはない、ということになる。