ジャカルタの病院で新型コロナの抗体検査を受ける女性(写真:ロイター/アフロ)

 インドネシア医師協会(IDI)は12月15日、今年3月の新型コロナウイルスのインドネシアへの初上陸からこれまでの間に、感染者の治療に当たる医師や看護師などの医療従事者369人が感染により死亡したとの統計報告を明らかにした。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国は医療関係者のコロナ感染死の統計を発表していないケースが大半で、国際社会でも医療関係者の定義や感染死者数の集計方法が一様でないため、数字の単純比較はできないという。

 とはいえ「アムネスティ・インターナショナル」の統計によると9月の時点で医療・介護従事者の死者数が1000人を超えているメキシコや米国、500人以上の英国、ブラジル、ロシア、インドなどには及ばないものの、インドネシアがASEAN域内では最悪の状況にあることは間違いないとみられている。

 インドネシアの場合、医師の感染死の数が多い原因としては、(1)感染防護器具や装具の圧倒的不足、(2)感染者の隔離施設・病床の不足、(3)医師不足による過酷な勤務による過労など――が以前から指摘されている。

 医療現場やIDIのこうした訴えに対してジョコ・ウィドド政権は「医療関係者への手厚い支援がコロナ禍を乗り切る大事な要素となり、関係省庁は全力を挙げて対策を講じるように」などと再三督励している。

 しかし医療現場の窮状は変わらずで、医師の感染死によって現場の医師不足が深刻化している上に、重篤患者の収容施設や病床不足も重なり、インドネシアは今、医療崩壊の瀬戸際に立たされているといえる状況だ。

1カ月で医師約40人死亡という現実

 インドネシアのコロナ感染者数・感染死者数は12月19日の時点で65万7946人・1万9659人と、ASEANではそれぞれ2番目に多いフィリピンの45万8004人・8911人を大きく引き離し、最悪の状況を記録し続けている。

 こうした厳しい状況の中で医療の最前線で治療にあたる医師については、IDIが11月10日に公表した統計では死者数は159人だった。それが今回の12月15日の統計では202人に膨れ上がり、約1カ月で42人の医師が感染死している異常事態となっていることがわかった。