FPIのカリスマ的指導者リジック・シハブ氏が11月10日にサウジアラビアから帰国したときの様子(写真:ロイター/アフロ)

 インドネシアのイスラム急進派「イスラム擁護戦線(FPI)」を巡る動きが目まぐるしくなってきた。

 ジャカルタ首都圏警察は12月7日にFPIのメンバー6人を射殺したことを明らかにし、11日にはFPIのカリスマ指導者とされるリジック・シハブ氏を新型コロナウイルス対策の保健衛生上の行動制限違反を扇動した容疑で容疑者認定し、12日には出頭したリジック氏を身柄拘束したのだった。

6人射殺は「虐殺」か「正当防衛」か

 まず、FPIメンバー6人の射殺事件だが、同警察のムハマド・ファディル・イムラン長官らが7日の記者会見で発表したところによると、同日午前零時半ごろ、ジャカルタ西郊のチカンペックからジャカルタに向かう高速道路上で警察官が乗った車両とFPIメンバーが乗った車が走行中に相互に妨害する危険な状態になり、両車両が停車後、銃撃戦となった。さらにその場でFPIメンバー6人が警察官によって射殺され、4人が現場から逃走したという。

 会見では、衝突の際にFPIメンバーが所持していたとされる武器も公開された。回転式拳銃2丁、日本刀のような刃物など3点、複数の銃弾などで、これらが「警察官が身の危険を感じたための止むを得ない正当防衛による射殺」であったことの根拠だとしている。

 ところがFPI側は全く別の主張をしている。当時、当該車両に乗車していたメンバーは車列前方を走行中のFPI指導者リジック・シハブ氏の警護に当たっており、「全員が丸腰で、武器の所持は警察のでっちあげに過ぎず、無抵抗のメンバーへの一方的殺人の疑いがある」として第3者機関による調査を要求しているのだ。