いまは、「返報性の原理」の裏返しのようなもので、外出の自粛要請、飲食店の時短営業要請に応じて我慢してきたが、その結果としていいことはなかったこと、前と変わらないこと、同じことの繰り返しに、みんな気付いてしまった。
そして実際に外食、飲酒をしてみたところで、感染はなかった。馴染みの店から感染者が出たとも聞かない。感染者数が増加傾向にあっても、近くに感染者がいない。きっと大丈夫だろう。そう周囲が教えてくれる。「社会的証明」に従えばそうなるのだろう。
首相や閣僚だって「多人数での会食」を控えないんだから・・・
感染者の増加を連日報じるテレビの情報番組も、スタジオ出演者を減らして、リモート出演させることも以前に比べれば少なくなった。スタジオ内で、距離を置き、アクリル板で仕切ることで出演者がしゃべりまくる。観ている側も、うまく用心さえすれば大丈夫と安心する。
まして、5人以上の会食を慎むように呼びかけていたはずの内閣総理大臣が自ら8人での会食に参加している。それを問題視する記者に対して、「家族が多いところはどうするんです? 飯は一緒に食うなということ? 」などと、のたまう副総理もいる。これでは世間が「政府の呼びかけなど真に受けてもしょうがない。それよりも我慢していたっていいことはない」となって当然だ。
もう小池都知事の言葉も、神通力を失って人の心を動かさなくなった。医療現場の悲痛な叫びも、それが仕事だろうと突き返される。自分が感染しなければそれでいい。
もうなにを言ったって、春のような緊張感は戻ってこないだろう。だって、説得力がないのだから。連日の新規感染者の増加も、未知の恐怖を煽ったマインドコントロールが効かなくなった証だ。