同じ日、日本医師会など9つの医療団体が合同記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で全国的に医療体制が逼迫しているとして「医療緊急事態宣言」を発表している。

 さらに23日には、日本医師会の中川俊男会長が記者会見を開き、こう述べている。

「新型コロナの医療に関わる医療従事者の心身の疲弊もピークを超えています。使命感で持ちこたえてきましたが、それももう限界です。どうぞ国民の皆様、医療従事者を守ってください。医療従事者が安心して医療に従事できるよう、医療従事者の家族と家庭が守られるように応援してください」

 だから、感染抑止に努めよ、というわけだ。

医療従事者の切迫感が世の中に伝わらなくなった理由

 テレビの報道番組などでも、医療現場の看護師などの覆面インタビューを放送している。その度に、現場の苦労は伝わってくる。

 だが、そこに覚える強烈な違和感。本質の不在。医療関係者がいう現場の疲労感と、医療サービス受領者の間に生じる相当な温度差。

 本来ならば、国民の生命に関わる問題のはずだ。感染者が急増して医療機関に押しかければ、キャパシティーを超えて治療や処置に手がまわらなくなり、救える命も救えなくなる。感染者ばかりでなく、他の怪我や病気でも人手がまわらなくなれば、治療が遅れ、取り返しのつかないことになる。だから、感染防止に努めましょう、ということが前提にある。しかも最前線の医療従事者はもっとも感染のリスクが高い。だからこそ、感謝と敬意の対象となる。

 それなのに、訴え方のせいなのか、感染を防止するための注意喚起を強く促すというより、まず現場への同情を求めてしまっているようにも聞こえてくる。

「だったら、自分さえ感染しなければいいんだろう」

 おそらくはこうした意識を持つ人たちが増えているはずだ。昨今、東京の時短営業中の飲食店をのぞいて見た盛況ぶりと、客の緊張感のなさから、そう思えてならないのだ。