世界最大規模を誇った中米プエルトリコの「アレシボ望遠鏡」が大崩壊。思い浮かんだのは「はやぶさ」だった──。「はやぶさ2」の帰還を前にその役割を終えたアレシボ望遠鏡が、はやぶさプロジェクトに果たした大きな貢献とは? 『小惑星探査機はやぶさの大冒険』 『小惑星探査機はやぶさ2の大挑戦』 『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』などの著書があり、はやぶさプロジェクトを間近で見続けてきたノンフィクション作家の山根一眞氏が解説する。ぜひ前回の記事(1)からお読みください(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63158)。(JBpress)
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「はやぶさ2」のカプセルの大気圏再突入は、久々の大きな宇宙ニュースになっている。
またカプセルを分離した「はやぶさ2」は、地球近傍から離脱し、2031年に到着予定の新たな小惑星(1998KY26)へと向かう。到着は2031年と気が遠くなる話だが。
私たちは、「はやぶさ」、そして「はやぶさ2」の大宇宙航海やサンプル採取や地球の大気圏再突入を、ワールドカップで得点が得られるかどうかハラハラするような思いで見てしまうが、小惑星探査はスポーツとは違う。シュートに成功し得点を得たボールを受け止めるなり、そのボールを切り裂き中身を取り出せて初めて得点になる。
「小惑星」の解明が究極の目的だからだ。
だが残念ながら、小惑星そのものとなると科学的な関心はさほど大きくないようだ。
2010年6月13日に豪州ウーメラ砂漠に「カプセル」を帰還させた「はやぶさ」初号機。そのミッションがターゲットとした小惑星は「イトカワ」(仮符号1998SF36、後、「25143 Itokawa」と確定)だった。
だが、2003年5月9日の打ち上げ時でもその形などはわかっていなかった。
小惑星は太陽系で地球や火星のような大きな惑星になりそこなった惑星の材料なので、地球など惑星の成り立ちを知るために欠かせない小天体だ。「イトカワ」のように長さが数百数メートルのものから本州の半分ほどの大きさのものもある。
小惑星はあまりにも小さいため19世紀末まではわずかしか観測されていなかったが、20世紀に入り観測技術が向上し発見数が急増してきた。
スコットランドの天体物理学者、スコット・マンリー氏による小惑星発見数の増加を描いた動画
最新版の『理科年表2021』(国立天文台編、丸善刊)では、2020年6月3日現在、軌道が確定した最新の小惑星番号は54万6077番と記している。小惑星は、未記載・未発見のものを含めれば60万個を超えると言われている。