(舛添 要一:国際政治学者)
イギリスは、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンを世界に先駆けて承認し、12月7日から接種が可能となる。ファイザーはアメリカのFDCにも緊急使用許可を申請しているし、モデルナも開発したワクチンを同様に申請している。臨床データの信頼性に対する疑問が一部で出ているが、アストラゼネカのワクチンも大きな効果があると見られている。
日本政府は、ファイザーと1億2000万回分、モデルナと5000万回分、アストラゼネカと1億2000万回分のワクチン供給契約を結んでおり、早ければ、3月には届けられると予想されている。2回接種するので、たとえばファイザーのワクチンだと6000万人分である。つまり、全国民に行き渡るだけの潤沢な量である。
ワクチン接種で見えて来た来年中の終息
世界中でワクチンが順調に接種されていけば、大きな安心につながり、来年中にはコロナ感染を終息させることができると見られている。
メッセンジャーRNAを使って開発したファイザーやモデルナのワクチンの有効性は95%と見られており、また副反応もほとんどなく、免疫学の専門家の意見を聴いてみたが、極めて有望だという。コロナの感染者・死者は、アメリカが1392万・27万人、イギリスが165万・5.9万人となっており、極めて深刻な状況である。そのため、ワクチンの承認を急いだという事情もある。
今後の課題は、高齢者や基礎疾患のある者、未成年者など、おそらく治験の対象となっていない人たちへの効果や副反応を見極めることである。さらには、ワクチンの効果がどのくらいの期間継続するかもまだ不明である。たとえばインフルエンザのワクチンは、接種後5カ月くらいは有効である。
その関連で、横浜市立大学の研究チームの調査結果が参考になる。コロナに感染し、回復した376人の98%が、半年後にも再感染を防ぐ中和抗体を保有していたという。この類推からすると、ワクチンも半年は効果が持続すると予測することができそうである。
ワクチン供給については、いずれの国も自国民優先なので、世界中の77億人の民に行き渡るには時間がかかることも問題である。とりわけ、発展途上国は国際社会の支援がなければ、財政的にワクチンを購入することができないであろう。