(遠藤 業鏡:中曽根平和研究所・客員研究員)

 環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)に配慮する企業への投資は広く「ESG投資」と呼ばれ、メディアの注目を集めている。日経テレコンで「ESG投資」を検索すると、2015暦年では44件しかヒットしないが、2020暦年は本稿執筆時点(11月末)で390件余りがヒットする。年率換算すると、5年前と比べてメディアの露出が10倍近くになっている計算である。

 世界持続可能投資連合(GSIA)の調べによると、全世界のESG投資残高は2018年に30.7兆ドルと運用資産残高の35.4%を占めるまでになっている。運用資産残高に占めるESG投資残高のシェアは、欧州で48.8%、米国で25.7%、日本で18.3%となっており、欧州ではESG投資がメインストリームとなっている。

 2020年5月20日、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)と責任投資原則(PRI)は、「21世紀の受託者責任」プログラムの最終活動報告書を公表した。受託者責任にESGの考え方を組み入れる動きが欧州を中心に加速している事実を指摘した上で、ESGを考慮しないことは受託者責任に反し、法的にも罰せられる可能性が高まっていると示唆した。

 長い冬の時代を経験してきたESGアナリストからすれば、「時代が追いついてきた」という感慨を持っているにちがいない。

 筆者はESG投資に好意的なつもりでいるが、ESGという言葉で何でもかんでも正当化する行為は控えなければならないと考えている。