11月16日、森喜朗・東京五輪パラリンピック組織委員会会長とともに記者会見するトーマス・バッハIOC会長(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 IOCのバッハ会長は、15日に来日し、翌16日に菅義偉首相や小池百合子都知事らと会談し、来夏に延期した東京五輪を予定通り開催することを確認した。これまで大会を準備してきた関係者、アスリート、スポーツに感動を求める人々などの期待を受けての開催への意欲の表明である。私も、都知事として、競技施設の整備、東京のまちづくり、ボランティアの育成などに努力したので、何とか皆の希望が叶えられないかと思っている。

 しかし、世界で、そして日本で新型コロナウイルスの感染が再拡大する中で、予定通り開催するには、数々の障害を乗り越えなければならないこともまた事実である。

 第一は、新型コロナウイルスの感染状況である。第二は、ワクチンの開発状況である。第三は、経費を含む経済的要因である。第四が世界、なかでもアメリカとヨーロッパの意向である。第五が、日本国民の感情である。以下、それを一つずつ検討してみよう。

第三波襲来のさなかに来日したバッハ会長

 第一点のコロナ感染状況であるが、今は最悪である。世界の感染者は5600万人を超え、死者も134万人以上である。オリンピックに大きな影響を持つ主要国の感染者数・死亡者数を見ると、アメリカが1152万人・25.0万人、フランスが206万人・4.6万人、スペインが152万人・4.2万人、イギリスが143万人・5.3万人、イタリアが127万人・4.7万人、ドイツが86万人・1.3万人となっている。

 しかも、このところ、一日の感染者数が急増している。アメリカが13日には18万人超、フランスが7日には8万6000人超、スペインが10月30日に2万5000人超、イギリスが12日に3万3000人超、イタリアが12日に3万7000人、ドイツが14日に2万2000人という惨状である。

 このため、以上の国々では、外出制限、集会禁止など、感染防止対策を徹底するための大幅な規制を実行に移している。春のときの都市封鎖の再来である。