(舛添 要一:国際政治学者)
菅首相は、10月18日から21日まで、ベトナムとインドネシアを訪ね、外交デビューを行った。両国とも日本との関係は良好で、欧米と違って時差もあまりなく、初の訪問先としては最適だった。しかも、インド太平洋地域においてプレゼンスを高めている中国を牽制することもできたのである。ただ、中国と険悪な関係にあるオーストラリアと違い、この両国は対中関係を徹底的に悪化させる気はないし、その点では日本の姿勢と同じである。
初外遊、ミスはないが華もない
この初外遊は、菅首相自らが指示したものではなく、おそらくは外務省がセットしたものであろう。その意味では、今後の菅外交は、外務官僚任せの堅実な、しかし政治的リーダーシップを感じさせないものとなるであろう。
スタンドプレーやパフォーマンスがないことは大きなミスにはつながらないが、首脳外交にはやはり華がなければならない。安倍首相にはそれがあったので、目立ち好きのトランプ大統領との親密な関係によって、日本のメッセージを世界へ発信することができたのである。
菅首相は地味であるし、目立たない。今後は、先進国首脳会議など複数の首脳と同時にやり合わねばならなくなる。菅首相がトランプ大統領と対峙して、丁々発止と議論を展開している姿はあまり想像できない。その点では、トランプ大統領のように破天荒ではなく、地味なバイデン候補が大統領になってくれたほうが、日米首脳会談は上手く行くような気がする。