米国での職務遂行が困難になる李大使に駐米大使の資格はあるか
「中央日報」は李大使の発言に対し、「李秀赫氏が駐米大使としての職務を遂行する意思と資格があるのか問わざるを得ない」と批判している。中央日報は、そもそも大使は「世界各国の大使は駐在国の信頼を得るためにすべての力を注ぐ。そうしなければ駐在国と円滑なコミュニケーションの窓口を構築して懸案が発生するたびに本国の立場を代弁し国益を最大化することができないためだ」としている。まさにその通りである。
米韓の間には、北朝鮮に対する対応の在り方、在韓米軍の駐留経費の負担問題、中国包囲網を巡るクアッドへの参加問題、戦時作戦統制権の移管問題など両国の関係を傷つけかねない難問が山積している。
しかも、度重なる韓国政府高官の感情的で不適切な言動が、一層の対立を煽ってきた。しかも、その発言者が文在寅大統領の時もある。
国連総会演説における、文大統領の「終戦宣言」がその典型であり、これは米国との調整なしに行われたものである。
かつて左翼学生運動の「全大協」(全国大学セ氏代表者協議会)の初代議長だった李仁栄(イ・イニョン)統一相は、つい先月、韓米同盟は「冷戦同盟」だと述べている。
安全保障担当の文正仁(ムン・ジョンイン)特別補佐官は、過去に「私にとって最善は、実際のところ同盟をなくすこと」と述べた。
こうした発言はすべて文在寅氏によって任命された人の発言である。しかも、こうした発言が出た時に、文在寅氏が叱責したとは聞いたことがない。このことは要するに文在寅氏の考え方を反映するものであろう。
こうした発言が政府の要人から飛び出した時には、二国間の関係が悪化しないよう、間に入って努力するのが大使の本来の役割である。しかし、李大使の場合にはその大使が先頭に立って米国の信頼をなくす言動を行っている。
米国の信頼を著しく傷つけた李大使では、もはや有効な調整機能を果たすことはできないだろう。そればかりか、大使として米国の要人と面会することすら難しくなっていくのではないだろうか。
日韓関係においても竹島問題が大きな感情的しこりを巻き起こす問題となってきた。かつて私が駐韓国大使だった時、私の竹島問題における発言がもとで、韓国国内において大使としての業務遂行に支障が生じたことがある。しかしその時の大使としての発言は日本政府の立場を反映したものであり、決して不適切な発言ではなかった。
それに対して、今回の李大使の発言は実質的に米韓関係の見直しに言及するものである。まさかそれが「韓国政府の立場を反映したもの」とでも言うのだろうか。だとすれば国際政治の大事件だ。そうではなく、「大使の個人的意見」だとしても、米国国内の受け止め方は極めて厳しいものになる。
もはや李大使では米韓関係の修復は困難だ。李氏が駐米大使のポストに起用されている限り、米韓関係はいっそう冷え込むに違いない。