深圳経済特区設立40周年を記念したイベントで演説する習近平国家主席のニュース映像(2020年10月14日、写真:ロイター/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国でデジタル人民元(DCEP:Digital Currency Electronic Payment)の導入が少しずつ始まっている。

 10月11日、党中央弁校庁、国務院から「深圳における中国の特色ある社会主義先行模範総合改革テストケース実施方案(2020-2025)」が発表され、深圳の今後5年の目標の中に「人民銀行デジタル通貨研究所深圳下部組織をベースにした金融科学技術プラットフォームをつくり、デジタル人民元のテストを展開し、デジタル人民元の研究応用と国際協力を展開する」という項目が盛り込まれた。

 同時に深圳の金融の対外開放を推進し、深圳を人民元国際化の先行テスト地として支援するという。また、外為管理システムをより完璧なものとして、条件に合う外資金融機関が深圳で証券企業やファンド管理企業を創設することも支持する。条件をクリアした外資機関が深圳で決済ビジネスを行うことも認める方針で、つまりデジタル人民元を使った国際決済業務モデルを深圳限定で構築していこう、ということらしい。

抽選でデジタル人民元を市民に配布

 中でも人々の関心を呼んだのは、深圳市政府と人民銀行が共同して深圳市羅湖区で実施するデジタル人民元“紅包(ボーナス)”政策だろう。

 8月14日、商務部は「貿易サービスイノベーション発展の全面的深化のためのテストケース総体方案」を発表し、「京津冀(北京・天津・河北)」地域、長江デルタ、広東香港マカオグレートベイエリア、中西部のそれぞれの地域でデジタル人民元導入テストを展開することを発表していた。人民銀行としては、まず深圳、成都、蘇州、雄安新区および冬季五輪の関連部門と協力して、状況をみながらデジタル人民元導入をその他の地域に拡大していきたいという。

 今回の羅湖区の「紅包」政策は、こうした流れの中での深圳経済特区設立40周年のイベントである。デジタル人民元の実証実験であると同時に、デジタル人民元が実用化に向けたスタートを切ったという、世界に向けた宣伝の意味もあろう。