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写真:アフロ

(文:中島真志)

 デジタルな通貨と言えば、つい最近まで仮想通貨「ビットコイン」やフェイスブックの「リブラ」などが注目を集めていたが、ここに来て一気に主役の座に躍り出た観があるのが「中央銀行デジタル通貨」(CBDC:Central Bank Digital Currency)である。海外でのCBDCの導入が間近に迫っており、日本でも足許で「デジタル円」の発行に向けた機運が急速に高まっている。

 ところが、日本においては、その投機性の高さから注目を集めたビットコインに比して、CBDCに対する関心はあまり高まっていない。CBDCの登場が、われわれの生活やビジネスにもたらすインパクトを思えば、その仕組みや今後の見通しについて理解しておく必要があるのではないか――そのように考えて、このたび『アフター・ビットコイン2 仮想通貨vs.中央銀行――「デジタル通貨」の次なる覇者』(新潮社)という本を刊行した。

近未来に迫るCBDCの発行

 CBDCとは、中央銀行が発行し、デジタル形式をとる法定通貨のことを指す。つまり、これまで「銀行券」の形で紙ベースにより発行されていた通貨を、「デジタル通貨」として中央銀行が発行するものである。人々は、各自のスマートフォンにデジタル通貨用の「ウォレット」(電子的な財布)をダウンロードし、そこで残高を管理しつつ、店舗での支払いや個人間の受け払いを行うといったイメージになる。

「CBDCなんて、実現するのはまだまだ相当先の話だろう」と高を括っている向きが大方であると思うが、実は「新たな現実」(ニュー・リアリティ)は、意外にすぐそこに迫っている。

 国際決済銀行(BIS)の調査によると、現在の銀行券に代わるようなCBDCの実用化見通しについては、調査先の中銀のうち、10%(6~7行)が3年以内に、20%(13~14行)が6年以内には、一般の人々が使うデジタル通貨を発行する予定としている。デジタル通貨の導入に向けた動きは、予想以上のペースで進んでいるのだ(図1)。

図1 中銀デジタル通貨(CBDC)の発行予定(BIS調査)

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