アメリカと中国の「新冷戦」はこの夏、ヒートアップする一方だが、両大国に挟まれた日本としては、中国が各分野において、アメリカと較べてどのくらいの規模まで迫っているかを分析することが重要である。
例えば、経済規模で言うなら、約3分の2まで来ている。軍事規模で言うなら、3分の1強まで来ている。軍事規模を見る際には、東アジア地域に限定して言えば、すでに互角まで来ているという見方もある。
そんな中で、中国の最大のアキレス腱、すなわちアメリカに較べて最も弱い部分が、人民元の国際化である。米ドルに較べて、人民元の国際化の歩みが鈍いのだ。
『人民元国際化報告』を読んでみた
中国が、人民元の国際化に乗り出したのは、2008年のアメリカ発の金融危機がきっかけだった。同年11月にワシントンで開かれた初のG20(主要国・地域)サミットで、当時の胡錦濤主席が、4兆元(当時のレートで約58兆円)の緊急財政支出を宣言。そこから人民元の国際化を、本格的に国家戦略にしていった。
具体的には、翌2009年の1月20日、中国人民銀行(中央銀行)と香港金融管理局が、2000億元・2270億香港ドルのスワップ(通貨交換)を行ったことから、人民元が「世界の大海」へと出て行った。
習近平政権も、人民元国際化の戦略を引き継ぎ、2015年10月には、中国人民銀行がCIPS(RMB Cross-Border Interbank Payment System、クロスボーダー人民元決済システム)を始めた。
この年から毎年、中国人民銀行は『人民元国際化報告』を発表してきた。この白書は、人民元国際化の指標となるものだ。
その最新版、『2020年 人民元国際化報告』が、このほど発表された。全6章立てで、131ページである。基本的なデータは2019年までのものなので、「コロナ前の分析」ということになるが、以下、特筆すべき箇所を、箇条書きにしてみたい(1人民元≒15・4円)。