10月5日、ストックホルムで発表された2020年のノーベル医学生理学賞(写真:ロイター/アフロ)

 全世界が新型コロナウイルス感染症で苦しむ中で発表され始めたノーベル賞、今年もこれらの意味合いについて、平易に検討していきたいと思います。

 本稿を執筆している時点では医学生理学賞と物理学賞が発表されていますが、私にとって一番の眼目は、今回、車いすの宇宙物理学者スティーブン・ホーキングがノーベル賞を逸した点にあります。

「ノーベル賞に間に合わなかったS.ホーキングの死」をコラムとして書こうと思ったのですが、やはり順番に見ていった方が、ストックホルムの姿勢を見せることにも近いと思いますので、今回は「C型肝炎」の克服を追いつつ、コロナ撲滅の方途を検討してみたいと思います。

 ちなみに、前後して記しているように、私がこうした原稿を書くようになったのは2008年、南部陽一郎先生と小林・益川両氏の物理学賞受賞を当て、その後6週間ほどで「日本にノーベル賞が来る理由」を書いて以来のことです。

 こうした原稿を書くようになった大本は、いま日本の国会を騒がせている日本学術会議にあります。

「我が国を代表して国際的な科学技術事業にコミットする」はずの日本学術会議で、大半の還暦を過ぎた正会員諸氏があまりにやる気がなく、日本を訪れた世界の頭脳たちのアテンドなど、私にお鉢が回ってきた様々な「雑務」を通じて、ノーベル賞の受賞者や審査員側の視点を知るようになったことによります。

 今年度も、最初の授賞は医学生理学賞から始まりました。

 受賞業績は「C型肝炎ウイルスの発見」ですが、この授賞の動機はあまりにも明白です。

 すなわち、現在は手の打ちようがまだきちんと見えていない「新型コロナウイルス感染症」をはじめとするウイルス疾患への、人類の克服の過程を検討して、その中で最も評価の高かった業績を過去50年遡って顕彰したもの、とみるのが妥当でしょう。