3月の計画停電実施の際には、さいたま赤十字病院(埼玉県さいたま市)で、停電のため交通事故の救急患者に対応できない事態が生じました。

 医療においては電力がストップすると、それが直接命に関わるケースも考えられます。それだけに、私はこの夏の計画停電が回避されることを切に祈っています。

 4月10日に東京都知事選挙で4選を果たした石原慎太郎知事は、会見で「パチンコやる人は我慢しなさい、自動販売機なんかなくたって生きていける」と節電対策の持論を展開しました。

 一方、蓮舫節電啓発担当大臣は「経済活動に影響が出るものを権力で要請する」ことに疑問を呈しました。石原都知事とは対照的に、各企業が自主的な節電努力で対処すべきだ、とする立場です。

 石原都知事と蓮舫大臣のどちらの主張が正しいのでしょうか。

 医療に置き換えて考えてみましょう。実は医療においても似たような対立の構造が起こり得るのです。

防衛医療には「正の方向」と「負の方向」がある

 医療には「防衛医療」という概念があります。

 医師が、医療過誤(医療ミス)による損害賠償責任や刑事責任を追及される危険性を減らすために、追加の検査や治療や診療を命じたり、あるいは高リスク患者や治療を忌避することを指します。

 石原都知事も蓮舫大臣も電力不足を解決しようとする目標は同じですが、その方策は真っ向から異なります。防衛医療の概念に当てはめると、石原都知事は「正の方向」の防衛医療の方策、蓮舫大臣は「負の方向」の防衛医療の方策に重なって見えるのです。